
2025/3/19
映画「関心領域」が僕らに投げかけること
※以下ネタバレを含みます。
アウシュビッツ収容所の隣に、プールや広い庭つきがついた素晴らしい家がある。誰もが憧れた生活を送ることができる。ここに住むヘス家族が映画内では描かれている。
収容所からは、叫び声や銃声が聞こえる。死体を焼いた時にでる煙がモクモクと上がっている。
こんなところで過ごせるとは、普通の人じゃない。なぜ、隣のアウシュビッツ収容所のことが気にならないのか。家が夢にまで見た理想の暮らしを実現させてくれる素晴らしいものだからなのか。夜中も叫び声や銃声が聞こえる。そんな中でもどうしてヘス家の人たちにゆっくり寝れるのか。これは当時のドイツ人がどうかしているのか、この家族だけがどうかしているのか。そんな疑問も湧いてくる。
映画の終盤、現在のアウシュビッツ収容所記念館に展示されている収容者の靴、衣服が映し出される。記念館で働いている女性の清掃員が、事務的に窓ガラスや床の掃除をしている。どこか彼女たちはアウシュビッツ収容所で行われた過去のことに対して無関心のようにも見えた。
我々はどうだろうか。
アウシュビッツの隣に住む家族は、確実に隣のアウシュビッツ収容所のことに対しては無関心である。良い家に住むなど、自分の生活の質の方が大事にしている。
今の僕たちは、このヘス邸の人達を責めることが本当にできるのだろうか。
ベストセラーとなっている「FACT FULLNESS」によると、数年で人々の暮らしはここ数年で確実に良くなっている。日本で暮らしている限り、生命の安全は守られている。食べ物もスーパーやコンビニですぐに購入できるし、豊かな時代になった。今の豊かな時代を生きる僕たちは、どこかヘス邸に住む人達と重なる部分がありはしないだろうか。
安全でいい時代に生まれた僕たちは、ほんの80年ほど前に行われた過去の悲惨な出来事に関心を寄せることができているだろうか。
そんなことを投げかけられているように感じた映画だった。