2026/1/31
『ゆめタウンの男』書評|90歳で「いい人生だった」と言える経営者の思考
人生の終わりに「いい人生だった」と言える人は、どれくらいいるだろうか。
広島では誰もが知っているyou meのピンクの看板。広島発の大型商業施設「ゆめタウン」を展開するイズミの創業者・山西義政さんが綴った『ゆめタウンの男』は、戦争・原爆・事業の失敗といった壮絶な経験を経ながらも、淡々と前向きに歩み続けた一人の経営者の人生録だ。
本書は、経営論でありながら、それ以上に「どう生きるか」を静かに問いかけてくる一冊である。
山西さんは16歳のときに父親を病気で亡くし、20歳で徴兵される。
戦争では海軍に所属し、沈没した戦艦にたまたま乗っていなかったことで命拾いをした。
さらに、潜水艦で出発する前日に終戦を迎える。
そして広島に帰ると、原爆で母親を亡くしていた。
これだけでも十分すぎるほど壮絶な人生だ。
しかし本書の終わりで、筆者は自身の人生を振り返り、こう述べている。
「そして、いい人生を送らせてもらったと日々感慨を新たにしています。」
ゆめタウンの男 戦後ヤミ市から生まれたスーパーが年商七〇〇〇億円になるまで 山西義政 (著)
どうすれば、このような言葉を自然に口にできるのだろうか。
自分が90歳になったとき、同じように思えるだろうか。
山西さんは、出店する際の土地選びが得意だったという。
パソコンはできないし、英語もできない。
だからこそ、「得意なことだけをやる」。
その姿勢は、まさにエッセンシャル思考の実践者だと感じた。
戦後まもない時期にアサリの行商をし、お客さんに喜んでもらった経験。
大阪に出店して失敗した経験。
こうした出来事が、のちの成功につながる原体験になっているようだ。
その後も、筆者の行動力と決断力は並大抵のものではない。
「ゴルフもしませんし、ほかに道楽もなく、何より仕事が好きなのです。」
ゆめタウンの男 戦後ヤミ市から生まれたスーパーが年商七〇〇〇億円になるまで 山西義政 (著)
成功のノウハウを学びたい人よりも、「このままの生き方でいいのか」と、ふと立ち止まる瞬間がある人にこそ、『ゆめタウンの男』は静かに、しかし深く刺さる一冊だと思う。
人生を振り返ったとき、同じ言葉を言えるように。そう思わせてくれる、静かで強い一冊だった。









